人事評価

「今年度はA評価を取らせる。その分、難易度の高い業務をやらせるし、多くのことを課していくけど、頑張ってついて来てな。」


育児休職から復職して1年経ったある年の4月。私は、直前に異動になっていて、新しく上司となった人に面談でこう言われた。


さらに上司は続ける。


「今年、来年、再来年と3年連続Aを取って、最速で昇格させようと思ってるから。そのつもりで頑張ってほしい。」


うちの会社の人事評価はABCの3段階。各年度の評価が点数換算されて(A:5点、B:4点、C:3点みたいな感じ)、数年間の合計が〇点以上だったら昇格できるっていうルール。


当時の私は、2年半の休職を経て復職したと思ったら、配属された部署で一年間腐りっぱなしという問題児。それを見かねて、その新しい上司が私を引き取ってくれたわけで。


どうひいき目に見ても、3年連続A評価とか、そんなポテンシャルがあるとは思えない私に、この人は何を言ってるんだろう…と思いながら、こう返した。


「でも、私、休んでた分、他の人より昇格は遅れるんじゃないんですか?」


「どれだけ休んでいようが関係ない。その時の実力で評価するべきだよ。」


それが会社の方針だったのか、単にその上司ひとりの考え方だったのかは分からないけど、私が勇気づけられたことに変わりはない。


今でも、この時の面談が私の目線を上げてくれたと思っている。


がんばろうと思った。


自分の評価なんて興味なかったけど、腐っていた私を引き取り、数年単位で私の育成を考えてくれていること、私に期待をしてくれていることが、何よりありがたく、嬉しかった。


3年後。この時、上司が言っていた通りの結果になった。


◆ ◆ ◆


今年も人事評価の季節がやってきた。まずは、昨年度の目標に対する達成度を自己評価して提出しなくてはいけない。私はこれが苦手。なぜって、その評価シート、あれこれ書く欄が多すぎて、とにかくげんなり、なのだ。自由記述で15個くらい欄を埋めて、かつそれぞれに対して自分で点数をつける。しかもその点数が0.1点刻みという…。


評価ってそんなに細かくやるもの??そんなの評価する側が勝手にやってくれーーー!!


ある年、全部の目標に対して「計画通り実施した」っていうひと言しか書かなかったら、上司が困ってた。「オレはおまえのことを分かってるからこれでもいいけど、人事部の心証がよくない」と。結局、書き直した。


もちろん、上司は色んな角度から部下のことを見るべきだと思ってるし、部下の細かい自己分析がないとアドバイスができない上司もいるかもしれないし、評価の納得度という意味でも細かくやった方がいいんだろうな、とは思う。


だけど!


評価って社員の成長を促すためのツールだよね。あんなに細かいものがなくても「3年連続Aを取らせる」その一言だけで十分だったよ、私には。


上司がどれだけ自分のことを考えてくれているかを知るだけで、十分だった。