はぐるま・タイムズ

組織の中でクルクルまわりながらキレイゴトを発信

後輩が会社を辞めた

会社の中のたった5人のチーム。そんなちっぽけな世界で、もがいているうちに時間が経ってしまった。これから少しずつこの半年のことを書いていこうと思う。


◆◆◆


昨年9月。


後輩が会社を辞めた。以前も書いた同じチームの10コ下の後輩。彼は今の部署になじめていなかった。


7月のこと。何気なく上司に後輩の話をしたら上司がポツリと言った。


「○○(後輩)は、いなくなっちゃうんだけどね・・・」


てっきり異動で別の部署に行っちゃうのかと思った。そしたら、この会社からいなくなる、ってことだった。


ショックだった。


私は上司の前でボロボロ泣き、やっとのことで「さびしいですね・・・」と返した。


当時の私は、精神的にいっぱいいっぱいで、後輩のことを考える余裕もないまま数か月が過ぎ…という状態だった。「明日後輩が異動になっても後悔しないか」と自分に問いながら後輩と向き合うと誓ったのに、だ。


私にとっては突然の、後輩の会社を辞めるという決断。


頭をガツンと殴られた、とはこういうことをいうのだろうか。またしても、何もできないままに後輩がいなくなってしまう…。手遅れになってから気づく愚かさよ。自分が苦しい時でも後輩のことを考えなくてはいけなかったのだ。


私がいっぱいいっぱいだった理由は、チームに置いてきぼりをくらっているような寂しさの中にいたからなのだが、後輩が辞めると聞いてやっと気づいた。後輩は、ずっと私と同じような気持ちだったのではないかと。楽しそうなみんなの輪に入れず、自分がチームに貢献できていると実感することもなく、数年過ごしてきたのではないか。表面に現れるプライドの高さの裏に寂しさをずっと抱えていたのではないかと。


自分が同じ立場になってはじめて後輩の気持ちが分かった。でも、時すでに遅しなのだ。後悔しかなかった。


◇◇◇


翌週、後輩と外にランチに行った。会社の近くの私には初めてのお店。卵かけごはんが食べ放題らしい。「ぬるい卵はお腹壊すリスクがあるんで、ちゃんと冷えてるのを選んでくださいね!」なんて後輩のアドバイスを聞きながら、こんな時間ももうなくなってしまうのか…と泣きそうになる。


後輩は、家庭の事情により実家に戻らなければいけなくなったと言っていた。もともと持っていた国家資格を活かして、実家で仕事をするとのこと。職場では孤立していたから、みんなは遅かれ早かれ彼は辞めると思っていたけど、私は、彼はうちの会社で働き続けたかったと思っている。「うちの会社も人手不足になって僕みたいな人を必要とする時が来ますよ、そしたら戻ってきますから」なんて冗談めかして言っていたが、そのいかにも彼らしい表現に本音がにじんでいた。


退職までのひと月半、私は後輩を社内のあちこちの現場に連れていった。ずっとオフィス勤めだった彼に、違う世界を見せたかったのと、第一線で働く人たちの熱量に触れて欲しかった。物見遊山でも最後の記念でもなんでもいい、とにかく、彼が新しい職場で頑張れるように、うちの会社で働いたことを少しでも前向きにとらえられるようにと。せめてもの罪滅ぼしだった。


最終日。いつもみんなの前では強がっていた後輩だけど、最後に一礼をしてオフィスを出て行った彼の目は真っ赤だった。


◆◆◆


先月、久しぶりに東京に戻ってきた後輩とランチをした。今度は、卵のリスクのない、少しおしゃれなお店をちゃんと予約して。


3か月ぶりに会った後輩は元気そうだった。国家資格を活かして、あちこち飛び回って仕事をしているらしい。「先生って呼ばれてるんですよ、こんな僕でも」なんてちょっと誇らしげに言う。本業以外でも、ビジネスコンテストに応募したりして頑張っているみたいだった。うちの部署で彼を笑顔にできなかったのは心残りだし、一緒に働きたかったけど、でも、とにかく元気でよかった!


それぞれの選択があり、それぞれの道がある。私も今回のことをちゃんと消化して前に進んでいきたい。