わたしの本棚を彩る本
わたしの名前は「本」
六本木の青山ブックセンターにフラッと入って買った本。家に読まなきゃいけない本が山積みになってるから「もうこれ以上買っちゃだめ、見るだけ!」って思ってたけど、やっぱり買っちゃった。
だって帯に「親愛なる読者へ。わたしはあなたのためにここにいる。」って書いてあるんだもん。
- 作者: ジョン・アガード,ニール・パッカー,金原瑞人
- 出版社/メーカー: フィルムアート社
- 発売日: 2017/11/25
- メディア: 単行本
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「これからわたしの物語をしよう。」からはじまる、本が一人称で本の歴史について語っている本。小さめの本でサラッと読めて、挿絵もかわいくて、そして、すごくおもしろかった。
文字はまだ生まれてなかった・・・という時代から物語がはじまる。
文字がなかった頃は、遠くの人にメッセージを伝えるのにモノを送ってたみたい。時には意味の取り違えもあり。侵略しようとしていた国から、矢と鳥が送られてきて「私たちは国を明け渡して、矢の前から鳥のように退却します」っていう降参の意味だと思ってたら、実は「おまえたちが鳥のように飛べるのでない限り侵略なんてやめよ、さもなくば矢を打ち込むぞ」って意味だったとか。そりゃあ、間違えるわ・・・。
今から5000年前に今のイラクに住んでたシュメール人が文字を発明。昔は紙もなかったから、粘土板に文字を刻んで。それからアルファベットができて、パピルスができて。最初は巻物だったけど、扱いやすいように冊子になった。ちなみにPaperの語源はPapyrusなんだって。
そして、15世紀。グーテンベルクが活版印刷を発明。低コストでたくさん印刷できるようになって、お金持ちだけじゃなくて普通の人たちも本を読めるようになった。それからペーパーバックができて、本が持ち運べるようになって、国境を越えて色んな考えが広まって行った。
本はどんな快速帆船よりも速く
わたしたちを遠くへ
連れて行ってくれる。
はつらつとした詩のページは
どんな馬にもおとらない。
本の旅はどんなに貧しい人も
ただで楽しめる。
この安上がりの馬車は
人の魂を乗せていってくれる。
エミリー・ディキンスン 1830-86(アメリカの詩人)
We have come a long way だなって。
文明の進歩って本当にすごい!文字も紙もなかった時代から、今では、本を通して、簡単に世界のどこかの誰かの考えに触れることができる。これまでの進歩に比べれば、最近、電子書籍ができたことなんて、ちっぽけなことだなって思った!
・・・のだけど、そうでもないっぽい。
ユニバーサル図書館
という訳で、もう一冊。この本には、これから世界がどうなっていくかってことが書いてある。
- 作者: ケヴィン・ケリー,服部桂
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2016/07/23
- メディア: 単行本
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この中に、ユニバーサル図書館っていうのが出てくる。いずれ、古今東西のすべての言語のすべての書籍がデジタル化されて、誰もがアクセスできるようになるだろうって。そして、Wikipediaみたいに一般の人たちが本のあらゆる文章に、関係する別の本の文章へのリンクを貼って、どんどん本と本とがつながっていく。
本はもはや一冊ごとに綴じられたものでなく、すべての本が織り込まれた巨大なメタレベルの本になり、ユニバーサルな図書館となるだろう。シナプスのように相互につながった図書館が集合知を生み出し、個別の本からは見えない世界を見せてくれるだろう。
電子書籍って単なる紙の本の代替じゃないんだな・・・電子化によって世界中の書物がつながるってとこに意味があるんだなって。そうなった時、いったいどんな世界が見えるんだろう!?
一冊の本を読んでる間に、私の興味や知識レベルに合わせてたくさんの付加情報が入ってきて、その一冊に対する理解が深まるのかもしれない。リンクをあちこち飛び回っているうちに、ものすっごい発見があるのかもしれない。
それはそれですごく楽しそう!
思ってもみなかった情報や物語に、今以上に出会えるんだろうから。ま、自分の処理能力はおいといてね。
これから
ユニバーサル図書館。そんなのちょっと想像できないけど、きっとそう遠くないうちに実現して、新しい本の読み方、というか、閲覧の仕方が普通になるのかも。私もユニバーサル図書館にアクセスするようになるんだろうなぁ。
でも、どんなにデジタルな時代になっても、私は、作者の世界観だけで完結している一冊一冊の本、本の装丁も含めたモノとしての本も好き。そこにはビットには置き換えられない魅力がある!
「わたしの名前は『本』」も手元にあることが嬉しい。わたしの本棚を彩ってくれてる。
あわよくば、いつか息子もこの本に手を伸ばしてくれたら!なんて思うけど、そこまでは望みますまい。なにせ息子は学校の読書週間にゲームの攻略本持ってくくらいですから。(笑)
シュメール人にとっては「記憶の家」、エジプト人にとっては「魂をいやす場所」、チベット人にとっては「宝石の海」、古代ギリシア人にとっては「魂のための薬箱」。
これ全部、図書館のこと!
これから本のカタチも読み方も図書館の概念も変わって行くのかもしれないけど、本が私の人生を豊かにしてくれることは、変わらない。本はいつだって私の世界を拡げてくれる。
今年もたくさんのステキな本に出会えますように!