思いがけず、ひとり飲みデビュー。

会社の方向性について部長にメールしたら「今度アフター5に話しましょう」って返信が来て、一緒に飲みに行くことになった。ちゃっかり自分が行ってみたかった居酒屋さんを予約。予約は19時。


仕事帰りに二人で電車で向かう。隣の席でメールをチェックする部長。ほどなくして、


「ゴメン、会社に戻ってもいい?」と。


見ると、iPhoneの画面にこんなメールのタイトル。


【緊急招集】○○事例


うわっ・・・まじかー・・・。ま、しかたない。「もちろんです!戻ってください。」って答えた。18時45分のこと。


どうしよう、一人になっちゃった。お店、キャンセルしようかな・・・。って、ちょっと迷ったけど15分前にキャンセルなんて、そんなの勝手すぎるよね・・・と思って、一人で行くことにした。


はじめてのひとり飲み。


◆◆◆


あの・・・すみません。2名で予約してたんですけど、相手が来れなくなっちゃって、私一人でもいいでしょうか・・・?


おそるおそる聞く私。


かわいい女性の店員さんが、明るく「もちろん!もちろんです!」って言って、カウンター席に案内してくれた。


それから、カウンターの奥から、男の店員さんが優しい笑顔で「一緒に飲もうね」って。ホッとした。


カウンターの中には、お皿を洗う「まささん」とお料理をつくる「かつひろさん」と「フクさん」の三人。みんな名札をつけてた。


団体のお客さんも入って忙しい時間帯だった。私はサラリーマンらしく、とりあえず生を頼んで、ゆっくり飲んでた。みんな忙しそうだから、おかわりを頼むのは、もうちょっと後にしよ、なんて思いながら。


でも、お皿を洗いながらまささんが、ちらっと私の方を見た気がしたと思ったら、グラスが開いたタイミングで「次は何飲む?」って声を掛けてくれた。ちゃんと見ててくれるんだなぁ。


カウンターの中の三人は、今どこのテーブルにどのお料理が出てるか、前のお料理が出てからどれくらい時間がたっているか、ちゃんと頭に入ってるみたいだった。かつひろさんとフクさんは、お客さんを待たせないように、優先順位を考えて、次につくるお料理を決めてた。


お客さんに心配りをしながら、休みなくテキパキ動く三人を見ながら、なんだか泣きそうになった。みんなスゴイ。


◇◇◇


お皿を洗うまささんは、店長さんだった。最初に一緒に飲もうね、って言ってくれた人。ちょっと不思議だったから、かつひろさんに聞いた。


「店長さんなのにお皿洗うんですか?」って。


そしたら、いつもはもう一人店員さんがいるんだけど、今日は休みだからまささんがお皿を洗ってるんだって。


「店長は、いつもみんなの弱いところ、弱いところに、スーッと入ってくれるんっスよ」


と、かつひろさん。なんだかステキだな。


みんな忙しいのに私にかまってくれた。住んでる町の話とかOKストアの話とかしたなぁ。


私「お皿拭いてるタオル、吸水力すごいですね」
まささん「だってこれOKのだから!」
私「だと思いました!やっぱOKですよね!」


単なる酔っ払い。(笑)


21時を過ぎて、お客さんが少なくなってから、小さいグラスが5つ目の前に並んで日本酒が注がれた。と思ったらそのうちの一つを私にくれて、みんなで「ひとり飲みデビューにカンパーイ!」と。


お会計をすませたところで今度は「食後酒ね」と言ってまたお酒を出してくれた。青森の田酒って言ってた。おいしかったなぁ。


温かく迎えてくれて、ホントに幸せな夜でした。一人飲みだったけど、全然独りじゃなかった。お酒もお料理もたくさんサービスしてもらっちゃったから、今度は誰かと一緒に行ってたくさん注文しなきゃ。でも本当はまた一人で行きたい。