涙にはじまり、涙に終わった短き現場時代。10年後の今、思うこと。

■現場生活のはじまり


「現場に女はいらない。なんでいるんだろうって思うよね。」


え・・・何・・・?
それ、今、私に言う?
私の歓迎会だよー・・・。


12年前。新入社員研修を終え、工場の現場に配属になった私。歓迎会で、隣に座ったオジサンからいきなりの先制パンチ。


受け流すスキルなんてなかったから、その場で号泣。他のオジサンたちがなぐさめてくれた。「すみません・・、泣くことじゃないのに、泣いちゃって・・・」みたいな。


明日からどーしよ・・・もう遠くに行きたいよー・・・って思いながら、なんとかポジティブシンキング。


きっとオジサンは酔っぱらってただけだ!
ちょっと言ってみちゃっただけだよね!
よし!きっとそうだ!


次の日から私は、勇気を振り絞って、オンナはイラナイ発言をしたオジサンのまわりをウロチョロするようにした。って言っても、何を話していいかもわからなかったから、時々、仕事の質問をするくらいだったけど。


でも、そのうちオジサンも普通に話してくれるようになった。「今日、暑いな~」とか「そろそろ昼飯行くか~」とか。


よかった。ホッ・・・。


■現場のおじさんたち


最初こそ先制パンチに面食らったけど、現場のおじさんたちはみんなとても優しかった。


私はミスばっかりしてたけど。「あの部品箱をひっくり返したのは後にも先にもお前だけ!」って私がもう覚えてない失敗談をいまだに飲んだら言われるくらい。かろうじて役に立てたのは、始業前のラジオ体操の号令のみ・・・。


でも、おじさんたちは懲りずに、ちゃんと私を指導してくれた。この作業のコツはこう!とか、時間かかってもいいから、これやってみ!とか。いろんな仕事をやらせてくれたし、いろんなことを教えてくれた。


私は、おやじギャグも大好きだった。「昔はガンガン日焼けしちゃったんだよね、若気の行ったり来たりでさ~。」とか。おじさん、おもしろすぎだよ~!!って、毎日笑ってた。


でも、私が現場にいられたのは1年だけ。キャリアパス的に、現場は最初だけって決まってたから。異動だよって言われた時は、上司の前で泣いた。(私、泣いてばっかり・・・苦笑)


おじさんたちが大好きだったんだ。


あれから11年。今は現場をサポートする部門にいる。


アメリカの会社の現場


この間、あるアメリカのメーカーの工場を見学させてもらった。何千人も働いている大きな工場で、工場長より上の偉い人が案内してくれた。


その偉い人。工場に一歩入るなり、次々と作業者に声を掛けていく。それが、まるで友達みたいなノリ!


"Hey! George~! How's your wife?" みたいな感じ。


それから、誇らしげにその作業者の人を私たちに紹介してくれた。どの作業者の人もとっても嬉しそう。


ヘイ、ジョージって!!エグゼクティブだよ?なんでこんなに現場の人と仲良しなの??しかも家族のことまで知ってるし!


これがさ、何十人って声掛けていくの。その全員を私たちに紹介してくれたわけじゃないけど。最初はヤラセを疑ったけど(オイオイ・・・)、さすがにサクラを何十人も仕込めるわけないな、って思ってシロと断定。


後でこっそり、その人の秘書にリサーチ。ねぇねぇ、なんでこんなに現場の人たちとイイ感じなの?って。そしたら、その偉い人は、毎日2時間、工場を歩き回ってて、ベリーユニークな人なんだよ、って教えてくれた。


その偉い人のポリシー。


1000人の部下がいるということは、1000コのグレートなアイデアがあるということ。


そう言えば、工場には現場の人の改善提案がたくさん貼ってあって、その偉い人は、ちゃんと一つ一つ目を通してた。自分で直接コメントを書き込んだりもするって言ってた。


この人、現場の人たちを信頼してるんだな~。それが現場の人たちにも、ちゃんと伝わってるってことか。


ガッテン!!!


■現場のことを考える


うちの会社は、今、現場の仕事のやり方を大きく変えようとしてる。ITツールを取り入れて生産性向上。


ここで、忘れちゃいけないこと。


同じツールを使えば、世界中、どこの会社も同じことができる時代に勝負を決めるのは、ツールに置き換えられない領域のパフォーマンス。そこで最後にものを言うのが、現場の人の誇りとか、気概とか、メンタリティだと思う。だから、現場の人たちの気持ちはとても大切。


アメリカの工場で作業者の人たちの笑顔を見ながら、うちの会社でも現場を大切に思ってる、現場のみんなの力を信頼してるって、もっと現場の人たちに伝えなきゃって思った。


何より、私は現場のおじさんたちに笑顔でいてほしいしね。